消化器内科
当科では、近隣医療機関に連携をお願いしつつ、広く消化器疾患の内科診療を行っています。消化管疾患については内視鏡による診断と治療および炎症性腸疾患の診療、肝疾患では慢性肝炎と肝癌の診断・治療を行っています。胆膵疾患に対する内視鏡的治療を積極的に行っていることも当科の特色の一つです。また、消化管出血や閉塞性黄疸ほか、緊急内視鏡処置が必要な病状についても対応しています。
特色・専門領域
胃壁は胃の内腔側から、粘膜・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の順に層状の構造をしています。胃癌は粘膜から発生してしだいに深い層へ進んでいきますが、粘膜下層までを早期胃がん、固有筋層以深へ進んだものを進行胃がんといいます。
早期胃がんのうち、リンパ節転移の可能性がほとんどなく腫瘍が一括で切除できるような病変は、内視鏡的な切除の適応であり、その具体的条件が『胃癌治療ガイドライン』に記載されています。内視鏡的切除の方法としては、ESDが広く行われています。
当科でもESDを積極的に行っています。この方法は、病変直下および周囲の粘膜下層に液体を局所注入してから、高周波ナイフを用いて、病変周囲を切開しつづいて粘膜下層を剥離することにより病変を切除するものです。外科手術に比べて、身体への負担が少ないことや胃切除後症状が出ないことは利点と考えられます。
2.炎症性腸疾患に関する治療
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に対し、重症度に応じて、次のような内科治療を行っています。
・5-ASA製剤 ・副腎皮質ステロイド薬 ・免疫調整薬 ・抗TNFα製剤
・白血球除去療法(LCAP)
3.慢性肝炎の治療
B型慢性肝炎に対しては、核酸アナログ製剤の投与を主体に治療と経過観察を行っています。C型慢性肝炎については、インターフェロン療法や肝庇護療法を行ってきました。2014年秋から、インターフェロンを用いない経口薬剤による治療が承認され、当院においても取り組んでいます。
4.肝細胞がんの治療
肝細胞がんは、ほとんどが肝硬変や進展した慢性肝炎を背景として発症します。従って、肝機能が不良であることが多く、治療を行っても肝臓内に再発しやすいという特徴があります。治療方針はこの特徴をふまえ、がんの進展度に加えて肝臓の予備能力を評価したうえで決定されます。
当科では、ラジオ波焼灼療法(RFA)や経皮的エタノール注入療法(PEIT)といった局所療法、カテーテルを用いた肝動脈化学塞栓療法(TACE)や肝動脈注入療法(TAI)を行っています。
→TACE例の画像参照
5.原発性胆汁性肝硬変(PBC)の診療
PBCは病因や病態に自己免疫学的なしくみが想定される慢性肝疾患です。中高年の女性に好発し,長期経過観察でもほとんど進行しない方から,進行して肝移植が必要となる方まで,様々な重症度の患者さんがいらっしゃいます。当科では、PBCの病態解明に関する国立病院機構共同臨床研究に参加しており、これまで多くのPBC患者さんの診療を行ってきています。
6.胆道系疾患への対応
肝臓で作られた胆汁が十二指腸へ流れ出る通り道に生ずる病気を胆道系疾患といいます。この分野に関して当科で行っている処置のうち代表的なものを示します。
(1)内視鏡による胆管ドレナージ
結石や腫瘍が原因で、胆管に狭窄や閉塞が起こった場合、胆汁の流れが悪くなり黄疸が生じ、胆管炎を発症することがあります。そのような病状に対して、胆管へチューブを留置して胆汁が流れ出るようにすることが胆管ドレナージです。処置に際しては、まず内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)の手技を行います。内視鏡を十二指腸へ挿入して十二指腸乳頭(胆管と膵管の出口)にカテーテルを入れ、造影剤を注入したうえでX線画像を撮影し、胆管狭窄や閉塞の状態を評価するものです。そのうえで、内視鏡を用いて細いチューブや“ステント”を留置することになります。鼻を介してチューブを体外に出して胆汁をバッグに貯める方法と、“ステント”によって胆汁を十二指腸へ流す方法があります。これらの方法は、患者さんの病状によって使い分けています。プラスチックステントによる胆管ドレナージを示します。→画像参照
(2)総胆管結石治療
総胆管内にある結石は、腹痛や黄疸、胆管炎を生じての発熱、などを引き起こすため、摘除する必要があります。基本的に内視鏡で処置を行います。胆管の出口にあたる十二指腸乳頭を拡げてから、バスケットで総胆管内の結石を取り出します。乳頭を拡げるためには、専用のナイフで乳頭括約筋を切る、もしくはバルーンで拡げる方法があります。前者を内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、後者を内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)といいます。ESTによる結石除去を示します。→画像参照
診療実績
外来患者数
年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | |
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外来患者数 | 初診 | 1,503 | 1,403 | 1,295 | 1,141 | 1,152 |
再診 | 16,697 | 15,968 | 15,357 | 13,834 | 12,665 | |
合計 | 18,200 | 17,371 | 16,652 | 14,975 | 13,817 |
入院患者数
年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 |
---|---|---|---|---|---|
在院延患者数 | 10,161 | 10,809 | 10,030 | 9,324 | 10,113 |
新入院患者数 | 845 | 803 | 810 | 709 | 710 |
平均在院患者数 | 27.8 | 29.6 | 27.5 | 25.5 | 27.6 |
上部・下部内視鏡検査数
※内視鏡検査・治療数は外科症例も含みます。
年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 |
---|---|---|---|---|---|
上部消化管内視鏡検査 | 2,029 | 2,071 | 2,055 | 1,785 | 1,848 |
下部消化管内視鏡検査 | 1,262 | 1,251 | 1,287 | 1,294 | 1,302 |
大腸ポリペクトミー/ 粘膜切除術(EMR) |
165 | 165 | 208 | 230 | 212 |
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お知らせ
患者さん並びにご家族へ
「原発性胆汁性胆管炎の発症と重症化機構解明のための多施設共同研究」 臨床研究へのご協力のお願い |
【PDF】 |
「C型肝炎ウイルス駆除後の肝発癌予測に関する研究」臨床研究へのご協力のお願い | 【PDF】 |
「肝硬変患者の予後を含めた実態を把握するための研究」臨床研究へのご協力のお願い | 【PDF】 |
「B型慢性肝疾患に対する核酸アナログ長期投与例の課題克服および 電子的臨床検査情報収集(EDC)システムを用いた多施設大規模データベースの構築」 |
【PDF】 |
「肝硬変患者のQOLの向上及び予後改善に資する研究」臨床研究へのご協力のお願い | 【PDF】 |
「消化器内視鏡に関連した偶発症の全国調査」臨床研究へのご協力のお願い | 【PDF】 |
スタッフ
二上 敏樹 (責任者) 臨床研究部長 消化器内科部長 |
【資格】 医学博士 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医・関東支部評議員 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医 日本肝臓学会肝臓専門医 産業医 【専門】 消化管疾患の診断と治療 |
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白壁 和彦 医師 |
【資格】 医学博士 日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器病学会消化器病専門医 |
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廣瀬 克哉 医師 |
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金児 菜美 医師 |
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竿代 丈夫 名誉院長 |
【資格】 医学博士 日本内科学会認定内科医 日本消化器病学会消化器病専門医 日本肝臓学会肝臓専門医 |
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根岸 正史 非常勤医師 |
【資格】 医学博士 日本内科学会認定内科医 |
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根岸 道子 非常勤医師 |
【資格】 医学博士 日本内科学会認定内科医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器病学会消化器病専門医・関東支部評議員 日本消化管学会胃腸科認定医 産業医 |