外科このページを印刷する - 外科

 「大学病院と同等の医療」・「自己完結型医療」を提供致します


 当院外科は東京都港区新橋にある東京慈恵会医科大学附属病院の関連施設であり、上級スタッフは大学病院で専門領域の診療を経験した医師で構成されています。最新の技術、知識をもって診療にあたります。高度な専門技術を要する疾患の手術に関しても、大学より医師を招聘し、可能な限り当院での自己完結型治療を目指しています。また、手術の術式・アプローチ法も従来の開腹手術から腹腔鏡下手術へ移行してきており、患者さんの体になるべく負担のかからない、優しい術式を多数取り入れております。
 埼玉西部地域の拠点病院として、診断・治療はもちろん、退院後の外来経過観察に至るまで責任をもって対応致します。また、専門分野のみならず、幅広い分野での診療ができるよう、地域密着型の医療を日々心がけております。

当科で治療する主な疾患

●逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア・胃食道逆流症・食道アカラシア

 代表的な食道良性疾患に逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニア、胃食道逆流症、食道アカラシアがあります。逆流性食道炎や胃食道逆流症は胃酸が食道に逆流することによって、胸焼け、逆流感(何か食道に上がってくる感じ)、呑酸(酸っぱい水が上がってくる)、げっぷなどの症状が認められます。程度の差はありますが、日本人の10人に1人~2人はこの病気を抱えていることがわかっています。逆流を抑える薬がないため、逆流内容のメインである胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)を投与します。多くの方々はこの薬の内服により、良くなりますが、薬を長く飲み続ける必要があります。また、一部の患者さんはこの薬でもよくならないため、手術が必要になります。ただしこの手術は食道を切ったり、胃を切ったりする手術ではなく、胃を使って食道を巻き付けて、逆流を防止する手術です。しかも当院では、開腹手術(お腹を開いて行う手術)ではなく、すべての方々を腹腔鏡手術(小さな傷で行う手術)で行います。
 食道裂孔ヘルニアは胃が胸のほうに上がってしまう病気で、いわば“胃の脱腸”みたいなものです。比較的高齢の女性に多く、背中が曲がっている方によく認められます。ヘルニアが大きくなると、食道が屈曲してしまい、食べ物が落ちにくくなったり、逆に胃から食道に食べ物が逆流するようになってしまいます。
 食道アカラシアは食道から胃に食べ物が落ちにくくなる、稀な病気です。食道と胃の境目にある、下部食道括約筋という筋肉が開かなくなるために、食道が拡張し、つかえ感や胸痛といった症状が出ます。この病気も腹腔鏡下手術で治療することができます。


逆流性食道炎 胸焼けを症状として、来院された患者さんです。食道の内視鏡写真です。典型的な逆流性食道炎が認められます。食道の粘膜が赤くただれているのがわかります(⇒)。
食道裂孔ヘルニア 逆流感を症状として、来院された患者さんです。食道の内視鏡写真です。食道裂孔ヘルニアが認められます。⇔の範囲が脱出した胃です。
食道裂孔ヘルニア01 食道裂孔ヘルニアの患者さんの食道胃透視(バリウム撮影)の写真です。胃の半分近く(⇔の部分)が胸のほうに脱出していることがわかります。食道も屈曲しており、食事が落ちていかないという症状で来院されました。
食道アカラシア  食道アカラシア患者さんの食道造影写真です。バリウムがほとんど胃の中に落ちていかず、食道の中にたまっていることがわかります。また食道はあたかもS字状に屈曲しており、かなり進行したアカラシアであることが判明しました。

●胃がん・大腸がん

 胃がん・大腸がんは日本人にとって罹患率のもっとも高いがんです。とくに最近は胃がんにかわって大腸がんが増加している傾向が認められます。病気の進行具合は様々ですが、病期(ステージ)に応じた適切な治療を行います。早期の癌には消化器内科と連携し、内視鏡的治療も積極的に施行しております。この内視鏡的治療は、がんの部分を中心に、健常な組織を一部含めて切除するものであり、非常に低侵襲な治療です。また内視鏡治療の適応とならなかった患者さんには、手術での切除を行います。手術は患者さんの病状に応じ、縮小手術から拡大手術まで個々に合った治療を行っており、腹腔鏡下手術を積極的に取り入れています。


胃がん・大腸がん
早期胃がんの患者さんの内視鏡写真。通常の内視鏡(左)ではややわかりにくいものの、色素をまくことによって(右)、腫瘍の形状がよくわかるようになります。この患者さんは、内視鏡で病変部分を取り除く治療(内視鏡的胃粘膜切除)で治癒しました。
早期胃がん
いずれも進行胃がんの患者さんの内視鏡写真。進行胃がんの患者さんには胃を2/3程度切除し、また胃の周りを中心としたリンパ節の摘出が必要となります。
大腸ポリープ
大腸ポリープの内視鏡写真です。いずれも内視鏡的にポリープを切除することで治療が完了します。
進行大腸がん
いずれも進行大腸がんの患者さんの内視鏡写真。腫瘍部分を含めて約20㎝程度の大腸の切除が必要となります。

●慢性便秘症に対する外科治療

 慢性便秘症は、病院を受診しなくてもご自分で判断して薬局・薬店で内服薬あるいは浣腸を購入して治療してきたため、これまであまり話題にならなかった疾患です。しかし、高齢者の大腸穿孔の最大の原因が宿便であることは昔から言われてきました。大腸穿孔による腹膜炎は敗血症に移行しやすく、死亡率が高い疾患であるにも関わらず、これまで慢性便秘症に対する十分な指導および治療は行われてきませんでした。また刺激性下剤の乱用によって結腸が拡張し結腸運動機能不全を呈する患者が増加してきました。そこで日本消化器病学会が中心となって慢性便秘症に対する指導を行うことになり、2017年に“慢性便秘症診療ガイドライン”が発刊されました。当院の河原秀次郎もその作成委員の1人です。
 慢性便秘症診療ガイドラインでは、 “本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態” を便秘の定義とし、その病態にあった適切な内科的あるいは外科的治療法が示されております。慢性便秘症を大腸運動機能障害と考え“結腸運動機能障害”と“便排出障害”の2つに分けて病態を評価しています。最近、慢性便秘症に対する治療薬がいくつか発売されその効果が期待されていますが、薬物療法抵抗性の症例は少なくなく、そのような症例が外科に紹介されてきます。


1)結腸運動機能不全に対する手術
 結腸運動機能不全とは、「結腸が不可逆的に拡張し、腸内容の移送が著しく低下した病態」のことで、手術に際してシネMRIなどで小腸の運動機能に問題がないことの確認が重要です。手術適応は、「結腸運動機能不全の状況にあって本人が手術を希望した場合」に手術を検討しています。
 結腸運動機能不全の診断には、胸部単純X線検査と腹部CT検査が重要です。胸部単純X線検査で右横隔膜下に結腸のガス像がみられる、いわゆるChilaiditi症候群を呈している場合が多く、腹部CT検査では椎体の1.5倍以上に拡張した結腸が常に観察されます。拡張した腸管が正常化する時期がある場合は、偽性慢性腸閉塞症であり手術適応を慎重に検討しなければなりません。
 結腸運動機能不全に対する手術法は、結腸全摘術+回腸直腸吻合術が標準術式です。しかし、直腸が拡張し直腸瘤などを形成して便排出障害を伴っていた場合には、結腸全摘術+回腸人工肛門造設術が適切で、この場合肛門からの自然排便はできなくなります。
 当院では、結腸全摘術+回腸直腸吻合術を腹腔鏡下手術で行っていますが、とくに20~30歳代の女性には単孔式腹腔鏡下手術を行っており、臍の創だけで手術が済むため整容性に優れ、手術を行ったことを他人に気づかれません。


2)S状結腸過長症に対する手術
 S状結腸過長症は、S状結腸捻転の原因となる疾患ですが、腹部単純X線検査で容易に診断できます。内視鏡的に捻転が解除できても1か月以内に再発する症例は手術適応です。手術法はS状結腸切除術ですが、臍下部に4-5cmの切開創を造設すると容易にS状結腸が体外に誘導できるため、腹腔鏡操作を必要とせず、比較的低侵襲な手術が行えます。


3)便排出障害(直腸脱、直腸瘤)に対する手術
 直腸脱とは、直腸壁の全層が肛門から反転脱出する病態のことで、比較的高齢者に多い疾患です。手術法としては経肛門的・経会陰的手術と経腹的に腸管の固定や切除を行う2種があり、病態と患者の全身状態を考慮して術式が選択されています。
 直腸瘤とは、直腸膣中隔が脆弱化して排便時に直腸前壁が膣側に膨隆するために排便困難や残便感を呈する病態のことです。手術適応は、①深さ2cm以上、②排便造影検査で排便終了時の擬似便の直腸瘤内貯留、③経腟的用手排便介助が有効の3つです。


慢性便秘 右横隔膜下に結腸ガスがみられる。
慢性便秘
腸管が椎体の1.5倍以上に拡張している。
慢性便秘 術中操作(全結腸が体外に誘導された。)
慢性便秘 単孔式腹腔鏡下手術
慢性便秘 単孔式腹腔鏡下手術後の腹部所見

●肝臓がん・胆嚢がん・膵臓がん

 肝臓癌については癌の進行度、肝臓の予備力を考慮し、肝切除、血管内治療などから最適な治療法を消化器内科と連携の上選択しています。膵臓癌、胆道癌は積極的な切除を目指していますが、抗癌剤治療との組み合わせで最良の治療選択と早期の社会復帰を目指しています。


肝臓がん01 肝臓がんの超音波所見です。肝臓がんの診断には、超音波、造影CT検査、シンチブラフィー、MRIなどを駆使して行います。
肝臓がん02

●乳がん・甲状腺がん

 乳がんは自己触診で比較的診断のしやすい癌です。早期発見、治療が重要となります。近年乳癌においては縮小手術が主流となってきており、手術だけで治療が完結することはあまりありません。状態に応じた手術、ホルモン剤、抗がん剤を組み合わせた治療を行います。


乳がん 左はマンモグラフィー、下段A,Bは超音波画像、Cは胸部CT画像、DはMRI画像です。いずれも乳がんに見られる典型的な所見です。
乳がん01
乳がん02

左甲状腺がんのCT画像(A)と超音波画像(B,C)です。
左甲状腺がん01
左甲状腺がん02
甲状腺疾患の診断は、このようにCT検査、超音波検査、シンチグラフィーなどで行っていきます。

 ※当院では全てのがんにおいて、がん治療ガイドラインに準じて治療計画を立てていきます。

●胆石症・胆嚢ポリープ

 胆石は非常によく認められる病気です。石灰化した石はお薬で溶けてなくなることはほとんど期待できません。また胆嚢内の石が、胆汁の流れる道(総胆管)に落下すると、黄疸などの原因となり、治療が難しくなります。胆石発作は非常に痛みが強く、入院期間も長期にわたります。したがって、発作を起こせばもちろんのこと、症状がない場合でも治療を念頭に入れる必要があります。また誤解されていらっしゃる患者さんもおられますが、胆石の治療は石をとる治療ではなく、胆嚢を摘出する治療が必要です。当施設では、胆石症や胆嚢ポリープに対しては、よほど炎症が強くない限り、原則すべての患者さんに対し、体への負担が少ない腹腔鏡下手術を第一選択としています。総胆管結石を伴っている患者さんに対しては、内視鏡を用いて総胆管結石の除去を施行した後、腹腔鏡で胆嚢をとる手術を行います。


胆石01
胆嚢胆石症の超音波(腹部エコー)所見です。胆嚢の中に石(⇒)が認められます。
胆嚢胆石症01 胆嚢胆石症の腹部CT検査所見です。胆嚢の中に結石(⇒)が認められます。CT検査で写る石は石灰化しているため、原則として胆石溶解薬の適応はありません。
胆嚢胆石症02 MRCPという胆汁の流れる道筋を映す検査法です。この検査を行うことによって、胆嚢()、胆嚢管(⇒)が総胆管に合流する位置などを確認します。
総胆管結石症01 MRCPによって指摘された総胆管結石症(⇒)です。胆汁の流れ道に石ができた病気です。黄疸や胆管炎の原因となるため、治療が必要となります。

●肝のう胞

肝のう胞01 肝のう胞は、肝臓の中にのう胞という袋ができてしまい、その中に液体が貯留する病気です。一般的には無症状のことが多く、経過観察します。左のような大きな肝のう胞では、腹部膨満感などの圧迫症状がでるため、のう胞の壁を破って一部切り取る、開窓を施行します。当院では、原則腹腔鏡下手術で施行しています。
肝のう胞02 巨大な肝嚢胞が占めています
肝のう胞03 嚢胞内の液体を吸引します
肝のう胞04 嚢胞の壁を切りとります
肝のう胞05 腹腔全体を見渡せるようになりました
肝のう胞06

●ヘルニア:そけいヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニアなど

 ヘルニアは「脱出する」という意味の言葉で、いわゆる「脱腸」のことです。ヘルニアの中でも鼠径ヘルニアは日常よく遭遇する頻度の高い疾患の一つです。鼠径部(脚の付け根の部分)の構造的な問題であり、手術で修復する必要があります。通常、メッシュという人工物を用いて補強修復を行います。当院では、異物感の少ない新しいタイプのメッシュを使用していることが特徴です。その他特殊なヘルニアとして、大腿ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア(腹部の手術の傷がもりあがる)などがありますが、全てのヘルニアに対して修復術を行っております。


メッシュ03 左図はそけいヘルニアの手術の際に用いるメッシュです。腹壁を強化させるために、筋膜の下方もしくは上方で固定します。
腹壁瘢痕ヘルニア01 腹壁瘢痕ヘルニアの患者さんです。下腹部の手術の傷の痕から腸などが突出していることがわかります。皮膚は離開していませんが、その下の筋膜を縫合した部分が裂けてしまうことにより、立位になったり、腹圧をかけたりすると下腹部が膨らんできます。
腹部CT01 腹部CT検査所見です。矢印の範囲で、お腹の中の、腸管などが脱出していることがわかります。
メッシュ02 これまで、腹壁瘢痕ヘルニアの手術では離解した筋膜を再縫合する操作が行われていましたが、高率に再発することがわかってきました。そこで、左図のようなメッシュを腹壁にあてがうことによって、腹壁瘢痕ヘルニアを治す手術が行われるようになりました。当施設では現在、このメッシュを用いた腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術を標準的に施行しております。

●肛門疾患:痔・脱肛など

 内痔核、外痔核、肛門周囲膿瘍、脱肛など各種肛門疾患の診断・治療を行っています。おしりの悩み事はなんでも気軽にご相談ください。

●小児外科

 乳児から学童までの小児外科治療を行っています。日本小児外科学会の小児外科専門医が丁寧に対応致します。外来スケジュールをご確認下さい。

救急医療

 上記に挙げた疾患以外にも、当科で治療すべき病気は様々です。特におなかの急を要する疾患(虫垂炎《いわゆるもう腸のこと》、憩室炎、腹膜炎、腸閉塞など)はほとんどが外科の領域であり、救急患者に対する迅速かつ適切な治療を日々心がけております。

診療実績

◆疾患患者

 以下の内訳は2022年の1年間に拝見させて頂いた患者さんの内訳です(のべ数)。すべての患者さんが手術適応となったわけではなく、内視鏡で病変切除することで治療したり、また点滴治療のためにご入院された患者さんなども含みます。大腸疾患でご入院された患者さんが最も多く、次いで胃、乳腺、ヘルニア、肝胆膵疾患と続きます。


疾患患者

◆手術件数

 手術件数500件を維持しておりましたが、コロナ等の影響もあり2020年は365件と減少してしまいました。麻酔科の常勤の赴任により緊急手術にも今以上に対応可能となり昨年度は424件まで回復となりました。今年度も500件への回復を目指し、安心安全な手術を心掛けて参ります。
手術件数

また、以下のグラフは最近5年間に手術させて頂いた患者さんのおもな病気の内訳です。
 大腸がん(70人)や胃がん(18人)などの悪性疾患、ヘルニア(105人)、胆石症(71人)など様々な疾患の患者さんを万遍なく手術をさせて頂いております。
 現在、日本内視鏡外科学会技術認定医を有するスタッフが常勤2人、非常勤1人でおります。今後、胃がんや大腸がんに対しても腹腔鏡下手術を積極的に導入していきます。またこれまでの大学での経験を活かし、食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、食道アカラシア、腹壁瘢痕ヘルニア、臍ヘルニア、鼡径ヘルニア、虫垂炎などに対しても、腹腔鏡下手術を導入致し、皆様にご満足頂いております。
主な疾患の手術症例数の推移1
主な疾患の手術症例数の推移2

トピックス

腹腔鏡手術

 近年、手術手技の進歩により、治療の質を落とさずより低侵襲な治療を行う事が可能となってまいりました。腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べ(1)術後の痛みが少ない、(2)術後の回復が早い、(3)傷が小さい、という利点があります。全国的に腹腔鏡手術が導入され、良性・悪性疾患を問わず適応は常に拡大してきております。当科では、胆石症はもちろん、胃がん、大腸がんに代表される消化管悪性疾患、その他の良性疾患に対しても積極的に最先端の腹腔鏡手術を導入しています。当科には、高度腹腔鏡手術の認定資格である日本内視鏡外科学会技術認定医を持つ医師が複数常勤しており、精度の高い腹腔鏡下手術を行うことが可能です。この資格を持つ医師は、大学病院でこれまで非常に多数の腹腔鏡手術を経験した実績があります。適応条件が合えば整容性に優れた単孔式手術(臍の1カ所のみを切開して行う手術)も行っています。

抗がん剤治療

 術前・術後化学療法から切除不能、再発がんに対しての抗がん剤治療も積極的に行っております。一言で抗がん剤治療と言っても、入院を必要とするものから外来通院で行えるものまで様々です。当科では、医薬品の検討会・勉強会を毎週行っており、常に最新の抗がん剤治療法を提供できるように日々努めております。全てのがん腫の抗がん剤治療に対応致します。

内視鏡的胃瘻造設
Percutaneous Endoscopic Gastrostomy; PEG)

 何らかの原因で口から食事をとれない方や、むせこんで肺炎などを起こしやすい方に直接胃に栄養を入れる栄養投与法のことです。鼻からの栄養チューブなどに比べ患者さんの苦痛が少なく、喉にチューブが無いため誤嚥の危険を軽減することが出来ます。内視鏡を使った小手術により作成いたします。

腹水濾過濃縮再静注法
Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy; CART)

 CARTとはがん性腹膜炎などの難治性腹水患者に対して、たまった腹水を濾過濃縮して腹水中のタンパク質などを回収し体内にもどす治療法です。がんの根本的な治療とはなり得ませんが、腹部の圧迫や苦痛が軽減され、栄養状態の改善などの効果が期待されます。当科では緩和ケアの一環として、適応のある方に対して積極的に導入しております。

鎮静薬を使用した内視鏡検査 ~苦痛のない検査を求めて~

 胃カメラ、大腸カメラは少なからず患者さんが苦痛を感じる検査です。当院では、原則鎮静剤、鎮痛剤を使用し、苦痛の少ない検査を行っております。もちろん、ご希望があれば薬剤を使用することなく検査を受けることも可能です。

脱腸(鼠径ヘルニア)でお困りの患者様へ

脱腸(鼠径ヘルニア)とは
 「鼠径(そけい)」部とは、足の付け根の部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
 「鼠径ヘルニア」とは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる下腹部の病気です。
 鼠径部は、筋肉によって支えられているのですが、年齢を重ねると徐々に筋肉が弱くなってくることが原因です。
 鼠径ヘルニアははみ出す位置によって、内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアに分類されます。
腹部CT01  初期症状は、立った時とかお腹に力を入れた時に鼠径部(足の付け根)に腹膜や腸の一部などが出てきて柔らかいはれができますが、普通は横になったり、押し込めば一時的に元に戻ります。しかし、放置して治るものではなく、次第に小腸などの臓器が出てくるので不快感や痛みを伴ってきます。
はれが急に硬くなったり、膨れた部分が押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなったり吐いたりします。これをヘルニアのカントン(嵌頓)といい、急いで手術をしなければ、命にかかわることになります。このような状態になる前に病院に行き、「外科」の医師の診察を受けるようにしましょう。病院では通常、医師は問診のあと、患者さんに咳などをしてお腹に力を入れてもらったり、手で膨らみの部分を触りヘルニアの状態を調べます。場合によっては、超音波検査やCT検査など他の検査を行うこともあります。

治療方法
 成人の鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治ることはありません。手術のみが”治せる”治療です。 鼠径ヘルニアの手術には大きく2つの種類があります。鼠径部を切開する方法(前方アプローチ)と、テレビモニターを見ながら手術する方法(腹腔鏡下手術)があります。 前方アプローチ法は鼠径部を4-5cm切開し、ヘルニアを外から内へ戻し、脱出部位に メッシュやプラグを挿入し、さらに弱った筋肉にシートを置いて補強する方法です。創部の痛みやつっぱり感、 腫脹などが術後に起こることがありますが、ほとんどの場合は痛み止めで コントロール可能です。

 腹腔鏡下手術は、臍、左右腹部に3箇所に1cm弱の切開を加え、お腹にカメラを入れて、弱くなった筋肉の部位にメッシュを留置、固定する方法です。 傷が小さく、手術中や手術後の痛みが少ないため、早期の日常生活、社会復帰が可能です。 また、お腹の中(腹腔内)を観察しながら手術を行うので、症状が出ていない小さなヘルニアの見落としが少ないというメリットがあります。 しかし、腹部手術の既往がある方や、合併症がある方など、 腹腔鏡下手術が困難なこともあります。
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニア
 当院では、患者さんの希望や患者さんの身体の状態などから、最も適切な手術法を選択するようにしていますので、手術法の選択に関しては担当医師とご相談ください。
鼠径ヘルニア

痔でお困りの患者様へ

ジオン注射(ALTA療法)とは

1.痔核とは
 日本人の3人に1人は痔で悩んでいるといわれています。
痔には大きく分けて「いぼ痔(痔核)」、「切れ痔(裂肛)」、「あな痔(痔ろう)」に分けられていますが、それぞれ症状は異なります。
・いぼ痔:おしりの血行が悪くなり、血管の一部がこぶ状になった状態です。
・切れ痔:肛門の皮膚が切れたり裂けたりした状態です。
・あな痔(痔瘻):肛門の周りに膿がたまって、外に流れ出るトンネルが出来た状態です。
痔の患者さんの中でもっとも割合が高いのは「いぼ痔(痔核)」です。
痔
 肛門周辺の粘膜の下には、血管が集まって肛門を閉じる動きをするクッションのような部分があります。 肛門への負担が重なると、クッションを支える組織(支持組織)が引き伸ばされ、クッション部分が大きくなり、出血をしたり、肛門の外に出たりするようになります。これが痔核(いぼ痔)です。
いぼ痔はさらに、直腸側にできる「内痔核」と肛門側にできる「外痔核」に分けられます。

ジオン注射(ALTA療法)は「脱出を伴う内痔核」に対して、切らずに注射による治療を可能にしたお薬です。
痔
2.治療の流れ
①まず最初に下半身だけに効く麻酔(腰椎麻酔)を行い、肛門周囲の筋肉を緩めて注射しやすくします。
②本剤を、ひとつの痔核に対して4か所に分割して投与します。複数の痔核がある場合には、それぞれに投与されます。
痔
③1週間から1ヶ月程度で、痔核の脱出が見られなくなります。

すべての脱肛する内痔核を治せるというものではありません。手術になるか、ジオン治療になるかは、診察の結果、脱肛の程度と特徴で判断します。
3.治療後の経過
 治療当日からの経過と望ましくない作用(副作用)の目安です。
入院期間および通院期間は、処置した痔核の数や大きさなども含めて患者さんの状態により異なりますので、治療後も先生とよくご相談ください。
痔

 当院は外科学会専門医・消化器内視鏡専門医修練施設に認定されています。

スタッフ

 
小村 伸朗 むら  のぶ
院長
【経歴】
 昭和63年 東京慈恵会医科大学卒
 平成 6年  東京慈恵会医科大学大学院修了・医学博士取得
 平成11年 東京慈恵会医科大学外科講師
 平成22年 東京慈恵会医科大学外科准教授
 平成24年 東京慈恵会医科大学附属病院消化管外科診療部長
 平成26年 独立行政法人国立病院機構西埼玉中央病院
       統括診療部長
 平成27年 副院長
 平成30年4月 病院長
 平成30年10月 東京慈恵会医科大学外科学講座 客員教授
【おもな資格】
 日本外科学会専門医ならびに指導医
 日本消化器外科学会専門医ならびに指導医
 日本消化器病学会専門医ならびに指導医
 日本消化器外科学会癌外科治療認定医
 日本内視鏡外科学会技術認定医
 日本消化管学会専門医
 日本食道学会食道外科名誉指導医
 日本食道学会食道科認定医
 日本医師会認定産業医
 メンタルヘルス・マネジメントⅡ種(ラインケアコース)
【おもな学会評議員】
 日本消化器外科学会評議員、日本臨床外科学会評議員
 日本内視鏡外科学会評議員、日本消化器病学会評議員
 日本消化管学会評議員、日本食道学会評議員
 日本外科系連合学会評議員
河原 秀次郎 かわはら  ひでろう
医療経営部長
化学療法部長
臨床検査部長
【経歴】
 昭和63年 東京慈恵会医科大学卒
 平成 4年  東京慈恵会医科大学外科助教
 平成17年 東京慈恵会医科大学外科講師
 平成25年 東京慈恵会医科大学下部消化管外科准教授
 平成31年1月より現職
【おもな資格】
 日本外科学会専門医および指導医
 日本消化器外科学会専門医および指導医
 日本消化器外科学会癌外科治療認定医
 日本消化器病学会専門医および指導医
 日本消化管学会専門医および指導医
 日本大腸肛門病学会専門医および指導医
 日本腹部救急医学会腹部救急認定医および教育医
 日本消化器内視鏡学会専門医および指導医
 日本内視鏡外科学会技術認定医
 日本外科代謝栄養学会教育指導医
 日本外科代謝栄養学会認定nutrition support team (NST)
 日本外科感染症学会外科周術期感染管理認定医・教育指導医
 ICD制度協議会インフェクションコントロールドクター(ICD)
 日本医師会認定産業医
【おもな学会評議員】
 日本消化器病学会評議員
 日本大腸肛門病学会評議員、日本臨床外科学会評議員
 日本消化器内視鏡学会評議員、日本内視鏡外科学会評議員
 日本腹部救急医学会評議員、日本外科系連合学会評議員
 日本消化管学会評議員、小切開・鏡視外科学会評議員
 日本外科感染症学会評議員、日本外科代謝栄養学会評議員
平林 剛 ひらばやし  つよし
(責任者)
外来診療部長
外科部長
【経歴】
 獨協医科大学卒業
 平成13年 東京慈恵会医科大学外科助手
 平成26年1月より現職
【おもな資格】
 日本外科学会専門医
 日本消化器内視鏡学会専門医
塚﨑 雄平 つかざき  ゆうへい
医師
【経歴】
 東京慈恵会医科大学卒業
 令和4年7月より現職
山澤 海人 やまさわ  かい
医師
【経歴】
 東京慈恵会医科大学卒業
 令和5年7月より現職
青木 尚徳 あお  ひさのり
医師
【経歴】
 東京慈恵会医科大学卒業
 令和6年4月より現職
坪内 咲希 つぼうち 
医師
【経歴】
 東京慈恵会医科大学卒業
 令和6年4月より現職